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asus4dmin9
November 9, 2009

デジタル上映用マスターに、フィルム上映と同様にコマの微細な揺れが出るようあらかじめ画像全体を揺らす措置(パーコレーション)が施されているというのは、ジブリのデジタル製作アニメでは定番の話だが、他にもたくさんの手書きアニメの風合いを感じさせる特殊な処理がされている。

 それらはひとつひとつすべてが公開されているわけではないが、BD版の映像を見ていると、ベタ塗りに見える部分にも塗りムラのようなものが確認できる。大きな塗りむらだけでなく、細かく筆の先の跡のような(柏木氏いわく亀の甲羅のような)ノイズが見える。これらはすべて、不自然なほどクリーンに見えないよう、あらかじめ映像の中に入れられているもののようだ。

 しかも日本のアニメは圧縮の歪みが見えやすい上、特典映像をすべてHDのまま収録したため、ビットレートは平均23Mbpsと2層50GBのディスクとしてはかなり低めの設定になっている。

「アニメが楽とは思っていなかったけど、あそこまで大変とは。手書きやアナログっぽい風合いを残そうとして、様々なシカケが映像に施されているので、それをデジタル圧縮の中で歪まさずに残すのは本当に大変だった」と柏木氏。

 その柏木氏がひらめいたのが、新エンコーダの特徴を用いた日本のアニメ専用チューニングである。

 実は以前にこの連載の中でも紹介した、「GOEMON」の圧縮に使った新型エンコーダは、もちろんポニョにも使われている。その新エンコーダを用いる事で、日本アニメ専用とも言える高画質エンコードの手法を編み出した。

 詳しくは「GOEMON」のエンコード技術紹介記事を見て頂きたいが、新PHLエンコーダでは通常は“つなぎ”の意味しか持たないBピクチャが、前方参照しか行なえないPピクチャよりもキレイな映像になる。

 日本のアニメは、ほとんどの被写体が2コマにつき1回しか動かない(異なる被写体が交互に動く場合はあるが、ひとつの被写体に限れば2コマに1回)。このため、質感の揃ったピクチャが1コマおきに登場するGOP構造を新たに設計してエンコーダに入れたのだという。実際にどのようなGOP構造になっているかは秘密というが、MPEGに詳しいエンジニアなら、すぐに思いつくはずだ。

 GOP構造を日本のアニメ向きに改造したことで、動きのバタつきがなくなり、映像全体が落ち着いて安定した画質を引き出せるようになった。

 ポニョは映像の中にある情報が凄まじく多い。連続した映像の中では、ほとんど歪みを感じさせず、とても滑らかに安定した画質の映像が流れていく。この安定感こそ、アニメ向きに特別設計したという新GOP構造の成果なのだろう。